― 少し前・谷への道 ―
[前を注視しながら歩いていると、自分の声に応える形でイェンスの声が聞こえてきた。
振り返り、苦笑する。]
イェンスは、気分が悪くなったりすることはないか?
急に瘴気の濃さが変わると、慣れているものでもきつい場合があると聞く。
「エル」も、そうだったしな。
[最後の道へ進む直前、体調不良で離脱し、街に留まった少年を思い出す。
最初はもっと多くの戦死達が集まっていたこの集団も、仲間たちが一人、また一人と減り今はこの人数だ。]
こんな風景を広げないためにも、私たちが、瘴気の源を何とかしなければいけない。
気の流れが元のように戻れば、きっと、彼…
[斜め前を歩むヴェルナーにちらりと視線を向ける。]
…が戦う必要もなくなるだろう。