[自己嫌悪と諦念がいったり来たりして、最終的にいつもの事だと開き直る。
その間に脳裏に浮かぶのは、出会った時の事。
同じくらいの年代で、同じ様に退魔術の修練を重ねる女の子。彼女と出会えたあの幼ない日、それからほんの少しの間だけ友人の様に過ごせた日々。
それを宝物として胸の中に押し込んで、今を──敵対する家柄の者として肩を並べて、亜梨沙の傍らにいると。
幼ない頃、丑ケ谷の娘である亜梨沙と仲良くしていた所を見つかり、祖父に頬を張られた時に、そう玲緒自身が決心した事だ]
(だから、平気。)(──平気にしなくちゃ)(未だに、慣れない……けど)
冷血だなんて思ってない。
[慣れない。そう思いながらも、端的にそう返した。
感情の抑揚が滲まない、やや細く涼やかな声は、それこそ亜梨沙の言う冷血人間の様なものだったかもしれない]