[ 赤毛の狼へと姿を変えたゲオルグ。>>74
ナイフを握る腕を目掛けて、駆けだした体躯。
狙いは明確、動きは明快。
瞬きをせずに、その意図と動きを見抜けば。
相手が駆けだすと同時に、こちらも真っ直ぐにゲオルグへと向かって走る。
まだ、腕を食わせる訳にはいかない。
それは時間の問題かもしれないが。
タイミングを合わせ、ぎりぎりのところでその牙を、身を捩って躱す。
無傷であれというのは贅沢だ。
ナイフを持った腕を、牙が腕を掠め。
ぶわっ、と皮膚が裂けて血が飛ぶけれど。
構うことはなく、突進した獣の頭へもう一方の手を付いて、
───くるり、
付いた手を起点に床を蹴り、身体を浮かせて。
逆立ちして回転するように、相手の身体を飛び越える。 ]