―― 天獄の泉:仕立て屋 ――
[ 目的地に着くまでの間
誰かの姿を見かけることはあっただろうか。
もし途中、誰かと出会うことがあったとしても
衣類というには丈の不十分な薄絹を
外れぬよう押さえることに必死であったから
注意を向けることは、難しかっただろうけど]
?
[ いくつかの角を曲がり、その先にあった扉
抱えられたままくぐり抜たなら
そこは布地に埋もれた空間だった>>66
ずらりと棚に並べられた装飾品や
トルソーに着せられた衣装達
巻物の様に巻かれた布地の数々が目を惹く。
腕の中、丸く目を見張り
室内の様子を瞳でぐるり、確認し]
仕立て屋、さん?
[ 正解だろうか。と
彼の顔を下から覗き込んでみたならば
自身をここへ運んできた当事者は
何やら思案をしている様で]