[こういう、女の子が喜びそうなものを見せるだけでも、
ヤコブに、いなくなった恋人を思い出させてしまうかもしれない。
今更そんなことに思い至れば、テープを持った手が若干引っ込みはする。
村に移り住んだ頃のヤコブと、恋人がいなくなってからのヤコブとでは、
ずいぶん変わってしまったのは、よーく知っている。
エルナに出来ることといったら、衣食住の衣の面がおろそかになりがちな彼に対し、>>28
仕立て屋目線で世話を焼くくらい。
――ああ、あとは、取り立てて以前と態度を変えないよう心がけてもいる。
恋人と村の外に出かけたあの時に何があったのか、訊かないでいるのもその一環。
いずれ話せる時が来るだなんて楽観的な思考が、混じっていないわけではないけれど]