[目前の草が揺れて、青い匂いが立つ。
冷えた空気には香りが混じりやすい。
されど、己は剣を構えなかった。
彼の気配は、姿を目視する前に察することが出来る。>>73]
知っているよ。
俺が君を誤認するようになったら、別人を疑って良い。
[口角を吊り上げ、生真面目な彼に、
早々碌でもない冗句を飛ばしつつ、
ポンと、気安く肩を叩いてから視線を遠くに投げた。]
では、気付かれる前に行動しよう。
門扉に辿り着けば、直ぐに結界を張る。
背水の陣なんて流行らないが、逃げられる方が難儀だ。
逃亡がやつらの選択肢にあるとは思わないが――…、
[そこで言葉を留めると、義務と青い血湛える男は双眸を細め]