[人一倍真面目で、謙虚。自分よりずっと年下なのにしっかりしていて、大人びた子。幼馴染に慕い、顔を合わせることも増え、いつからか幼馴染同様、家族のように大切に思っていた子。弟が家を出て数年、彼の成長を見るのは彼女の一つの楽しみでもあった。]
…………ふぅ…
[溜息をつけばまた椅子に座ろうとする。何かしらの言葉が飛んできたかもしれないが、そんなものは耳に入らずに。]
──カラン
[その時、扉が開く音がする。と、自分が立ち上がるより先に、目の前の椅子が音を立てた。先を行く幼馴染の背中から覗けば、金糸の髪の少年の姿を認める。少年はほんの少しだけ笑った。
それは数年前の観測官の試験の合格発表の日。春から彼は幼馴染と同じ制服を着ることになる。これはこの物語が始まる数年前の出来事]*