―サロン―
[野茨公の形良いくちびるが弧を描けば
恥ずかしさよりも嬉しさが心を満たす。
体すべてと紡がれると驚きに目を瞠った。
翆に途惑いと怯えにも似た感情が過る。
戯れと流せぬのは熱籠る口吻の余韻があればこそ]
証がなくとも繋がれている事実はかわりません。
貴き我が君にすべてを捧げられたら幸い。
ですが……、触れて頂く事さえおこがましく
これ以上のお目汚しをするわけにはいきません。
[身動ぎ、解くを試みるのは腰にある手。
けれど主と慕う者への遠慮が動きを控えさせた。
衣服と共に床に広がるマントをちらと見る。]