[ 去年、王都で。
セルウィンの兄の文才を噂に聞き、面会を申し込んだが、残念ながら都合がつかないと断られた。
そんなことが数回続いて、引かれればいっそう追いかけたくなる心情に逆らわず、ギデオンは蔦をよじ登って窓から屋敷に侵入したことがある。
セドリックは、呆れながらも許してくれ、「弟もそうやって窓から入ってきたことがあった」と言った。
兵役についている弟を思って作った詩というをいくつか朗読してくれた、その声は鮮明に思い出せる。
セドリックは足が不自由なことを機にしていて、「こんなわたしのところに王弟殿下がおいでになったと知れたら妬まれましょうから、この訪問は内密にしておいてほしい」と頼まれた。
内密にしてもいいが、また来ると言っておいた。
このようなことになって──切ない。]
自分も聞かせてもらっていいか?
[ セルウィンの最期の想いを。*]