[ある夜、青年は空き地へと足を向けた。あまり人の来ない、小さな空き地だ。建物の間、狭い道を抜けた先にぽかりと空いた草地が在る。彼はそこが好きだった。人気のないそこで、黙って一人星空を眺めるのが好きだった] … っ、[ただ。その夜は先客がいた。暗がりで気付かなかったそれに気がついたのは、音がしたからだ。啜り上げるそれは、押し殺した泣き声のようだった。驚いたような沈黙の後、くぐもった声での謝罪を向けられて、はじめて、相手が年若い女性なのだと気がついた]