[『そうですか』
ジムゾンの返事は、あっさりとしたものだった。これでいい、心を残さないままここで別れてしまえばお互い傷つかなくて済む。]
(ハッ…、たった一度肌を重ねただけじゃねえか…)
[望んだとおりの結末のはずだった、けれど現実は胸の奥が焼けつくほどに痛い。
ジムゾンに背を向けたまま。先ほど触れようとしても出来なかった手の平を固く強く、爪が食い込むほどに握り締める。
本当は今すぐにでも抱きしめたかった。
形の良い唇を奪って。さらさらの髪を撫でて。
白いうなじに顔を埋めてジムゾンの香りを肺いっぱいに吸い込みたい。
それでも――――。
"忘れろ、あの日のことは全部" そう言うつもりで振り返った。はずだった。]