― そして玉座の前にて ―
[父王は崩御された、それも何の前触れも無く急な逝去には例外無く驚きを示した>>1。
その死に疑問を持たない者も少なくは無い、当然自分もその中の一人だ。
急過ぎる王の死に警備を固めながらも、死の究明にも力を注ぐ。
あんなにご健在で且つ、一月後に後継者の発表されるというタイミングでの父王の死は此方の疑念を強くさせた。
そんな自分を時間は待ってはくれない。
王の間にて、次期国王の発表をこの耳で聞くべく厳粛に発表を待つ。
そして粛々とした空気の中で知らされた新たな後継者は――己では無く、弟のウェルシュ。]
――――っ!?
[殴られていないのに殴られてしまったのでないのかという錯覚を覚えた。
代々後継者の習わしとして国軍を預かり国内外に後継者として認識させる様にしてきた訳であり、先代の王も先々代の王も前の王より国軍を任せられ指揮を取り王へとなったのだ>>71。
当然自分もその様になるものだと思っていたのだから、この発表に只ならぬ衝撃を覚えていた。
近くに掲げられた文書は一目に父の筆跡で御名玉璽を押されているのは分かるが。
国の根幹に関わる文書を作る際、必ず此方に話を通すのが習わしだったはず。
此方が立ち会う立ち会わないにしても、話は耳に入る筈、なのに。
その疑問を抱き始めたのと同時に兵達がざわつき始める>>32。
それに対し文官達も騒ぎ兵達もそれに乗ずる>>42。
弟が声を上げ制止をしても、騒ぎが緩やかになったが、文官も兵も喧騒は収まらない。]