[開始の選から一呼吸、動き出すまでに間を開けて。最初の動きは、後ろへ向けて下がる軽い跳躍。慕うよに周囲舞い散る桜花はふわり、魔の傍を離れて行く。勝負の邪魔はしない、とでも言うように。唯一残る、耳飾りの桜が揺れて]……それ、と。[どこまでも軽い口調で言いながら、対する『蕾』の左側へと回り込む。口調は緩いが、動きはそれと不釣り合いに、速い。回り込んだ魔は左頬に掠めるような口付けを落とした後、大きく後ろに跳んで距離を開ける。蒼の狩衣の袖が翻り、銀糸の桜が月光を弾いた。**]