[ディーターの言葉に首を振る。クララはディーターを見た。けれども、その瞳の焦点は合っていなく、何処か遠くを見ているようだった。海でディーターと対峙していた時も。クララの瞳は映していながら、彼の事を見ていなかったのだろう。例えば、昨日。皿を洗う手つきが覚束なかったとか、ディーターに皿を返す際に間違って何もない場所に皿を滑らせてしまうところだったとか。クララが何を考えているのか分からないのは、何処を見ているのか分からない視線のせいも原因のひとつだったのだろう。]