[シモンがお湯を沸かす様子を横目に眺めながら、>>67
ぱちぱちと暖炉の火が爆ぜる音を聞く。
未だ年若いとはいえ、この村で生まれ育ったペーターにとっては、
冬の驚異は肌に染みていた。
かつては平和な家庭で暮らしていた少年が、今は一人
村のパン屋に身を寄せているのも、
冬の猛威が全てを奪い去ったからなのだ。]
薪はどれだけあっても足りないですからね。
オットーさんに運ばせるのも申し訳ないですし、
足りないようなら、僕あとで取りに行きます。
[オットーの手は、パンを焼くための大事な手だ。
薪を運ぶなどの仕事は、なるべく自分がやった方がいいだろうと、
世話になっている彼の為、少年なりに気を遣っているのだった。
まだ雪が積もっていないこの時期ならば、
それほど力の無い自分でも、荷車を用いて薪を運ぶことが出来る。]