[自分を慕ってくれた犬は、最後までわたしを疑わず、真っ直ぐな目をこちらに向けてきて尾を振った。
首に両手を掛けると、撫でてくれたのだと勘違いしたのか、嬉しそうに耳を伏せ目を細めた。
手に力を込めたら、───耳をつんざくような声が上がったかもしれない。
それは、わたしの手元からだけでなく、辺りからも、同じように、いくつも、いくつも]
ごめんなさい……、ごめんなさい……。
[嗚咽混じりに詫びると、背中に鞭が飛んだ。歯を食いしばって目を閉じて、頬を涙で濡らしながら、手だけは離さないようにした。
ただひたすら祈る思いで手に力を込め続けた。……やがて、手の中から、命の反応が消え失せるまで。]