( 一晩。)
[ 一晩を経て、カナンは彼と共に王府へと本来の役目である使節としてブラバンドに出航するらしい。副使のシメオンも同行するだろう。
有象無象の身分低き者としての利をここまでは生かしてきたが、ここは逆にだからこそあるべき位置に戻るべきであった。
あるべき位置。]
( さて――。)
[ 地方軍の一隊長以下の将校である自分。
上の人間――所謂偉い人間は雲の上であって、人は雲を見上げても、雲は人を見る事は無い。
雲からの気まぐれな雨が、結果として人を濡らすだけだ。
雲は人如きを濡らそうなどと思って、雨を降らしたりはしない。
だからこそ]