― 現在:首都ブラバンド ―
―――――……貴方の脳は蚤以下ですか?
[激しい音がしたかと思うと、下級兵が横薙ぎに倒れる。それを足蹴にすると、兵の顎を掴み、顔を覗き込む。口調こそ穏やかではあるが、目は凍てついている。]
巫女姫を争いの渦中に入れるなんて、何処の馬鹿ですか。
自ら殺されにいくものでしょうが。
[けれども、と。反論しかけた兵を更に殴り付ける。]
……はぁ、まぁ蚤と話す気はありませんね。
まぁ、良いです。騎馬隊を出しなさい。
……いえ、一隊で構いません。親征軍に見つからぬよう、慎重に距離を取りつつ後を付けて下さい。
私は行きません。ブラバンドを留守にさせる気ですか?
何かあれば、この箱を開けなさい。伝令蜂が飛びますゆえ。
[そう言って、小箱を隣に立つ上級兵に渡す。苛立つような表情のまま、爪を食み、暫し思案する。]