[変装のテクニックを教えてくれたのは伯父──母の兄だ。
伯父は15年前の政変までは領主に仕える徴税役人だったが、野に下って子供らに簿記などを教えている。
そして伯父はカークに、封蝋を気づかれないように開けて戻す方法や公文書や筆蹟の偽造、尾行や変装の技術を伝授してくれた。
おそらく叔父はただの徴税役人ではなかったのだろう。
それゆえに新政権にも与することができず、隠棲した。
カークは伝書屋として活計をたてる裏で、習い覚えた技を用いて、託された書状のうちこれはと思うものをこっそりと開封して読み、入手した情報をやりとりする情報屋となった。]