[少女はへなりと眉尻を下げ、泣き出しそうな顔をする。
愛犬もそれをみてさすがにまずいと思ったのか
くぅん、と甘い慰めるような声を出し少女を見詰めた。]
――…大丈夫、こんなことじゃ泣かないよ。
ほら、いいこにして、オズ。
[潤み湛えたままの空色の双眸が弧を描き笑みを形作る。
わう、と愛犬は一鳴きして少女を帽子の落ちた場所まで先行した。
駆け寄る一人と一頭に気付いたのか誰かの手が帽子を拾い上げる。
傍に寄ると少女は顔を上げ、拾った彼を見上げ]
すみません、それ、……
[私の、と言い掛けたくちびるが動きを止めた。
息をのみ、琥珀色の双眸をじ、と見詰める。
ぽろぽろと空色の眸からは雫が止め処なく零れだして]
[少女は愛犬にあげた大事な名を、音なくくちびるのみで綴る。**]