― 水路南海域 ―
[ ザイヴァルの行く手には、シュヴァルベと離れ、提督旗艦の援護に向かおうとする巡洋艦シュヴァーンが先行している。
先を急ぐことを最優先としながらも、北上してくる満身創痍のザイヴァルを視認すると、後部主砲を撃ちかけて、その足を止めようと試みる。
ザイヴァルの船足が緩まぬなら、そのまま互いに撃ち合いながらのデッドヒートの様相ともなろうか ]
[ 一方、旗艦に距離を離された第二艦隊の残る巡洋艦二隻は、当然にザイヴァルに追いつき、助ける為に動く ]
[ 戦艦シュヴァルベは、東へと抜けようとする巡洋艦を主砲で狙いながら、間に入って僚艦を守ろうとするかの如き、もう一隻には、容赦無く副砲の砲撃を加えた ]
主砲射角修正、右15度、撃てー!
[ 男は艦橋で指揮を続けている。骨折については、気付いている士官も在った筈だが、誰も治療を勧めはしなかった。
動ける限りは、聞く筈がない、と、諦められている、とは、男も承知のことだった ]