[その時。王宮の人々は───、いや。
王宮近くにある街の民たちも皆、一様にその音>>71を聞いただろう。重く、厳かに鳴り響く鐘の音を。
あれはなに? と、かつて聞いた少女がいた。>>69
目を丸くした友だちに、あれは鐘の塔だよと少年は教えてあげた。
お祝いや弔いや、大事な時に鳴らす鐘なんだ。
いいなあと、憧れのように落ちる声。
どんな時もさびしくないね、と。
それを聞いた少年は少女の手を握った。
今度お祝いの鐘を一緒に聞こう?
そしたらさびしくないよと無邪気に笑った───…
その鐘が、時ならぬ音を響かせる。
その異様に、人々は不安げに騒めいた。これは何の鐘だ、誰の葬送の鐘だろう。どよめきは不安に不安を呼んで次第に大きくなり、]