ちょっと待っててくれ。
[ 崖の上に出てすぐ、男は馬を降りて、崖の上にぽつんと生えた痩せた樹木の影に、二つ並んだ、石を積んだだけの墓標の前に立った ]
「苦しんで」と言ってたな。
[ やはり祈りを捧げるではなく、男は墓標を見下ろしたままで、声をかける ]
確かに俺は「苦しんだ」...満足か?
[ 短剣の毒にではなく、双子の残した心の毒に...苦笑と共に、そう告げて、男は腰に提げた水筒から、少しの清水を、二つの墓標にかけた ]
[ 男が、立ち去った後、風に揺れた木から、ころりと団栗の実が落ちたのは...誰も知らない... ]