[呼び起されたコッペリアは、こんな時間に何故起こすのかと、文句のひとつも言いたげな素振り。]
確かにね。
自分が食べられもしないものに熱心になれないのは分かるけど、今のうちに慣れておくのも悪くないだろうさ。
[だってもうすぐ、わたしは、君に最後の贈り物をしたあと、何もしてあげられなくなる。
林檎の剥き方なんて、慣れれば簡単。実はわたしにだって出来る。けれど、いまのうちに教えておこう。
後ろ手で指先を微かに動かせば、それに応えるように動き出すコッペリア。
机の上の果物ナイフと林檎を手に取って、どうにも不器用な仕草で、少しずつ皮を剥く。
一つ、一つ、出来たものを皿に載せていく。
コッペリアがそうしている間に、飲み物を並べる。一日の議論が終わったあとだ、喉が渇く人もいるだろう。
生業としている人形操りだ。普段あまり大勢の前で見せることはないのだけれど、ここ数日を共にした彼らの前ならば、話は別。
夜食の支度が済んだなら、コッペリアを椅子に座らせ、自分はその傍の壁に凭れ、部屋の様子を今一度眺めた]**