― デメララ近くの川 ―
[ それは、即席の橋が川の両岸を繋ぎ、兵士達がその橋を渡り始めた直後。堤を切るための低い詠唱の声は、水音にまぎれてほとんど届かなかっただろう。その代わりに兵士達の耳にはっきりと届いたのは、上流から迫る土砂の迫る轟音。
それが自然に起こった土砂崩れでは無い事は、土砂の中に、角を尖らせた岩や、巨大な槍のように鋭い先端の木材が混ざっていることで、知れただろう。
すでに渡河を終えた者、或いは急いで橋を渡りきった者が、橋にぶつかり溢れ出た土砂から逃れようと走れば、その先には落とし穴が待っている* ]