―Nルーム―
[Nルームに並ぶ装置に、彼を横たえ、顔まで飛び散った血を、ごしごしと些か乱暴に拭く。
それはそうでもしないと、また涙が落ちて、彼の顔を汚しそうだったから。
手早く拭いて、エレにしたときと同様に、隈のひどい、血の気の失せた頬を撫でた。]
……あのときのチップ、……結局受け取ってくれませんでしたね……。
……酷い、人だ。
[そう呟いて、自分は怒っているのだと、泣いてやるものか、と唇を噛みしめた。
声は震えていたかもしれないが。
もはや、お決まりになった演奏に、見送った人間の多さを改めて自覚する。
ハーモニカを取り出して、すうっと一息。]