[>>62部屋を覗きに来たイドの微かな羽音に、顔を上げる]
…――そうだ、先生なら、直せるかな?
[ゆらり、立ち上がる片手には長い髪を指に絡めてぶら提げたドールの頭、もう一方の手でベッドから垂れるドールの足首を捕まえて。
揺れる頭をゆらゆら振り回し、首の無い身体を引き摺り扉の外へと…]
[…――途端、雨の匂いに混じる甘たるい血の匂いが、ふわり、鼻先を擽り、首を捻る。
辺りを見渡せば、其処彼処を赤く染めた「あの日」の光景が蘇る様な錯覚を覚え、懐かしさに目を細めた。
雷鳴のゴロゴロと地を這う重低音が、まるで飢えた自分の腹の虫の代わりみたいに空気を震わせ唸っている]
――自室→廊下へ――