[そう、こうなることは分かっていたことだ。
モルトガット帝国が日の沈まない国を目指し、即ちウルケルの掌握するグロル海峡の開放を目指してやってきた時。
軍艦に先立って、最初に齎された開放を勧告する帝国の使者にウルケルが突きつけたのは、およそこの先ウルケルの国庫を半世紀ほどは支えるあろうと思われる莫大な保証金と、年毎の非常な額の海峡使用料だった。
曰く、ウルケルが過去にこれを許した例のひとつもないこと。
曰く、よってモルトガット帝国の掲げる理想に加担する形を取る以上、それに応じた相応の保険料が必要となるであろうこと。
更に、これに不服ある場合、ウルケルは力を以ってモルトガット帝国の干渉を排除すべき用意のあること。
ひとつひとつの主張は、まあ良かったのかも知れない。
だが最大の問題はその額と、ある種傲然と思われる程の対応だった。
つまりこれは、ウルケル側にグロル海峡開放の意思がないことを示した。来るなら来い、力で応じるという構えである。]