ゔっ……ゲホッ、ゴホッ!
あぁクッソ……!?
[一瞬でも胸を強く圧迫される形になった影響で壁に背を付けたまま咳き込んで
手から離してしまったナイフに気付くも、そちらに気を取られて次の攻撃の構えを取るクレメンスの姿を捉えたのは既に距離を詰められた後だったか。
死神は男の体を屈ませてそれを避けようとしてくるが、男は体を支えるように壁に手を付いてさり気なく抵抗する。
避けようと必死な死神が腕への支配を疎かにしているのを利用したのだ。
だからクレメンスの攻撃を完全には避けられなかっただろう。
辛うじて避けても肩を抉るように斬りつけられ、その時はナイフを拾いに死神が動くけれど
男の抵抗が成功してクレメンスの刀が左肩を貫いたのなら間違いなく激痛が襲うだろうが、それを引き抜こうと右手で刀を掴もうとするはず。
刀で貫かれたままではナイフが拾えないからという事だが、男にとってはそれに加えて逃げようがない状況になるからとても都合が良くなるから
そうなった場合はそのまま引き抜かれてくれない事を祈った事だろう。**]