― 『世界軸』中層・個室 ―
[仮眠の間に沈んでいたのは、幼い頃の夢。
生まれつき、右の脚は膝から下が存在せず、右肩は殆ど動かすことができなかった。
どうしてそうなったのか、は、誰にもわからない。
二人いる兄と、姉は皆、これ以上はない、という位の超健康体だったのに。
時を隔てて生まれた末娘の様子に公主夫妻は驚いたものの、叶う限りの慈しみを持って子を育てた。
外に出る事など当然叶わず、ただ、窓から外を眺めるだけの日々──それを変えたのは、天から落ちてきた紫色の煌きだった。
どうにか動かせた左の手を夢中で伸ばして受け止めた紫水晶。
それに触れた瞬間に感じたのは、言葉では言いつくせないくらいの安心感。
それが意味するものを知りたい、と。
それまで、何も願う事なくただ生きてきた少女が初めて口にした願い。
それは幾多の挫折を経て、『正常な成長』という対価を支払う事で叶えられる事となり、そして──]