[ 撫でる手は、避けられはしなかった。それに少しだけ安堵して、けれど、また来てくださいと願う声には>>71答えは返さず、ただ微笑みだけを返す ]
さよなら、マーレ。
[ 振り切るように踵を返した先、駆け寄ってくる小さな姿が有った。
宇宙船の模型を握り締めたその子供は、マチスやコンラートが孤児院を訪ねる度に、宇宙や船の話をしてくれと熱心にせがんだ子だと覚えている>>0:263 ]
おいで。
[ 涙を溜めて見上げる子供を手招いて、そのまま抱き上げる。物も言わず、ぎゅっと首筋にしがみついた子供の背をぽんぽんと叩いて、コンラートは子供を抱いたまま、再び歩き出した ]
[ シメオンの前を通りすぎる一瞬、口をついて出たのは、無意識の呪言。
だが触媒も使わず魔力も籠もらぬそれは、今は、ただの言霊に過ぎなかった* ]