[ここまでは、何の諍いの様子も聞こえてこない。>>65
風さえ、場違いな程に緩やかだ。
それでも酷く冷たくあるのだけが、この現状をよく示しているかのようだった。
ただ、彼女のそれが推測であるのなら。
僅かにでも現場を見てきた意見としては、それは簡単すぎる未来予知に他ならなかった。
次代の王が、すんなり決まりはしないだろう。
歯切れ悪くも答えた言葉を彼女は否定せずに、寧ろ願望めいた言葉を落とすのだ。
平和の恒久を疑えない身であったなら、と。]
…そう、だな。
[それ以上の言葉は持ち合わせなかった。
彼女が次に顔を寄せて囁くその時まで、俺も黙っていた。
バツが悪そうな様子から目線を背ける。>>66
そこから見える街は、やや騒音の多い気がするのを除けば、何一つ昨日と変わりはしないように見えた。]