[けれど。それを識れども尚、彼を是とは致し難かった。
私怨もあると、男は自らに思う。
男は結局どうしても、クレイグを討ったアルブレヒトが許せなかった。
かつて信じた男であれ──いや、だからこそ許せなかった。
とはいえ、それだけではない。
反逆者としては、いかに良く彼がラモーラルを纏め上げたとはいえ、やはり弑逆の謗りは免れ得なかったし、それにより乱れたものも確かにあった。
彼の願った民の平穏とて万全ではない。
辺境伯と王国の施政の恩恵を受けそびれた森や平原の民は多い。
そして何より、それらをも纏め上げ、ラモーラルを一丸とするだけの資質を、理想を、男はアルブレヒトよりもダンクラードに高く見たのだ。]