ご近所さんにお裾分け、ってなぁ。
[諾と返事が返れば、早速袋から半分程を取り出し、積み上げる。
ひぃふぅ。数えるのはただの口遊び。
無造作だけれど、隙間なく袋の中に収まった果実が幾つかなんて、男にもわかっちゃいないから。]
…まーた読まれちまったか。
実は、頼もうと思ってたんだ。
[僅か交差した視線のあとに告げられる言葉には苦笑を。
このパン屋には言葉にしなくても考えが伝わることがあるようで、分かり易い顔なのかねえと頭を掻いた。]
でも、ま。ありがとな。
焼いてくれんならシュトーレンがいい。
[そろそろ、旅に出ていた昔馴染みが帰って来る頃だから、とは言わない。
ただ、焦がすなよーと付け足して戸へと手を掛け]
焼ける頃にはささやかなお裾分けも終わってるだろうさ。