[何かを発した際、シメオンの白い顔から、更に色が消える。
ポツリと零れるように、吐き出された言葉は、音としては届いたものの、内容を聞き取ることは適わなかった。>>54
カークとシメオンの会話の"音"に、二人とも、言葉には言い表せられないような悲しみと懺悔が含まれるような気がして、ぎゅうっと胸が痛くなる。
彼らに、かける言葉を持たない自分が、何ともちっぽけで、無力で。
お互いに何かを吐露するような、その会話に入ることすら、できず、ただただ眺めていることしか出来なかった。
この船には、……もうこの三人しか、いない。
ハダリーが、仮に人狼だったら、ダーフィトを襲い、そして脱出船で逃げたのだろうか。
あれだけ、警戒していたダーフィトが、みすみすとそれを許したのだろうか。
ピアノの音源が入ったチップ。
ポケットに入れて持ってきていたそれを、無意識に撫でる。]
ダーフィト、……貴方を襲ったのは、誰だったんですか?
[その呟きは、彼らには届かなかっただろう。
……教えてくださいよ。
彼にも、決して届かない言葉を、一つ飲み込んで。]