[逃げるようにしてベッドから降りようとしたエルフ。
しかしその腰を力強い腕に抱きしめられて、引き寄せられてしまえば小さな悲鳴を上げた。]
……っ、!
[何かに怯えるように震えていたが、彼の腕の中から抜け出そうとする様子はない。むしろ意志とは真逆に、腰に回された腕に手を当てて]
…………。覚えてる。
[彼の問いかけにはこくりと頷いた。目の前にある彼の胸板――昨日はフリフリ可愛いブラウスだったが今はどこにもない――を見れば、自信なさげに俯く。更に彼の『嘘じゃない』という言葉には、悲しげに耳を垂れて]
でも……。昨日の私は、私じゃ、ない……
あなたが好きになったのは……昨日の、明るくてよく笑う私。
……今の私は……あんな笑い方、わからない。
一緒にいても……つまらない――
[腰に回された腕に強く抱きしめられて、彼に悪戯な笑みを見せられればまた悲しげに眉を顰める。
エルフにとっては、この数百年探していた大切な物がいざ目の前にあるという状況に戸惑いを隠せないようだ。今まで手に入らなかったものである分、それは眩しくて、尊くて。]