─ 屋根の上 ─
[空を見上げてふと思い浮かぶ。
いつも教会で物静かに本を読んでいたあの女の子。]
──大丈夫ですよ、貴方は貴方のままでいいのです。
[そう伝えたかった。だけど伝えられなかった。
知っているからだ。自分らしくなんてそんな生き方を簡単に許すほど世界は優しくないことを。
自分を変えずあるがままに生きられる者なんてわずか限られた者にしか許されてなどいないということを。]
だから私は恐れた。
心地のよい言葉がかえって彼女を苦しめてしまうのではないかと。
[なんという未熟。
皆から神父様と呼ばれていても小さな女の子一人の道しるべにもなってあげられなかった]
これもまた未練、なのでしょうか。