[男にとってのオットーは、島のパン屋であり信頼の置ける存在であった。十年の前のあの惨劇が起こるまで、オットーは朗らかでよく笑いよく喋るリーザの兄だった。親が島の外に出稼ぎに行っている時は、パメラ・リーザと共に遊んでもらった記憶もあるが、十年前のあの日以来、中身が入れ替わったのではないかと思うほど彼は変わってしまった。ただ、優しいことは昔も今も変わりないのだが。両親を失って浜辺で独り海を眺めながら泣いていた時、泣き止むまで無言で側にいてくれたのがオットーだった。]