― 回想/八年前 ―
[師の友人だという人と一緒に来た男の子に、未だ名乗り慣れない名を伝えて。
子供は子供同士遊んでこいと、背中を押され出ていた庭でそれは起こった]
…あ…ま、まって…っ
[不意の突風に被っていた帽子が煽られ、慌てて手を伸ばすも間に合わず。
空を舞った挙句大きな木の枝に引っかかってしまった帽子に、どうしようと途方にくれた。
そんな自分を見てか否か、何時の間にか少年がその木に登っていて]
え…あ、あぶないよ、レトくん
もう、いいから、
[降りてきて、と言おうとしたけれど少年は程なく帽子の元まで辿り付いて。
引っかかっていた枝からそれを取ってくれたのを見れば、安堵と嬉しさに自然と笑顔が浮かびかけるも、束の間]