― 西五区 ―
……。
[咄嗟に攻撃から庇うように前に出た左腕から赤い血が滴る。
虚ろな視線は一度それを捉えてから、再び目の前の“異形獣”を見た]
はい、そうです。
私は行かなくてはいけません。
呼ばれています。
[ぶつぶつと呟きながら、左腕を高く掲げ、振り下ろした。
散る飛沫が一瞬のうちに鋭い睡へと変化して、此方を狙って伸ばされた棘だらけの蔓を切断した。
植物のような形の異形から、甲高い悲鳴が上がるのに紛れ]
あの方もきっといらっしゃるでしょう。
[そう口にした途端、笑みのようなものが浮かんだ]