[彼の視線が、彼の爪に切り裂かれた左肩の傷口へ泳く>>56。
”絶望“の響きを帯びた謝罪>>57と、
呼吸するたびに溢れだす赤い水音。
止めどないそれに、失う恐怖を予感して蒼白になりつつも。]
いいの。分かっている、分かっているから…
“あなた”が望んだことじゃないのは、分かってるから。
生き続ける意味や価値がなかったなんて、言わないで…
“あなた”とまた逢えたことを…一緒にすごせた時間を、
わたしは…身勝手だと分かっているけど、けして後悔できない…
[謝らなくていいと囁いて微笑んでくれた“あなた”の、
触れてくれた手を握りしめて。
“あなた”のせいじゃないと、微かに震える唇で伝え、
微笑み返した。]