いつものように、自転車に乗った駐在さんがものすごい勢いで走り抜けていく。
「おつかれさまですー」
と思ったら、ききっとブレーキの音を立てて止まり、くるっと方向を変えた自転車がまた風を巻き起こしながら戻ってくる。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。ディークさん。パトロールですか?」
「ええ」
「お疲れ様です」
「ありがとうございます、ええと、それでですね、今度お店に伺っても?」
「はい? あ、ええ。贈り物の御用命ですか?」
そう聞き返すと、端正な顔を少し赤らめて巡査が口ごもった。
「あの、それだけじゃなくて、ええと住民調査も兼ねて」
「はい。分かりました、いつでもお待ちしております」
「あっ! ディークちゃんじゃないの! なになに、今日はお店に来てくれないの?」
「あら、ロスリンさん」
「うわびっくりしたっ、てかまだ昼っしょ!」
昼の下でも愛らしい夜の蝶がきらきら光る唇を尖らせながら、おまわりさんの腕にひらひらと纏いつくのを見て、一緒に笑った。