――収容所――
[収容所に囚われた者達が、穏やかな挨拶を交わした直後。
クスクスと、密やかな笑い声が響き渡る。
どこからともなく反響するようなそれは、やがて通路の中程で闇が凝り、黒いローブの形を成すにつれて、実体を帯びた肉声に変じた。
数秒の間をおいて、収容所の通路にその姿を結ぶのは、天使めいた容貌の、けれど異質な空気を放つ者]
貴方に妹がいたとは初耳です。
……お久しぶりですね、まさかこのようなところで見えようとは、思いもしませんでした。
[フェリクスに視線を据えながら紡ぐ言葉には、意地悪い揶揄の色が潜む。
双眸を細めて、喜悦混じりの笑みを零した]