[ぼんやりと焦点の彷徨う瞳。目の前にいる相手を、認識できていない様子で、そう『答える』。その声は、調子だけ聞けば、何かを観念したようにも聞こえるはずだ。けれど、諦めというよりは、例えば――…あらゆることを試し、全ての手段が尽きて、最後に残ったその一つを前に静かに心を決める、そんな、とても静かな響き。けれど、再び船が軽く揺れれば。首を振って、ふらりと立ち上がった。今度こそ、意識のはっきりした赤い瞳で、向かい合う男をじっと見つめ。]