[そもそも、齢にして僅か十五歳。市井の娘であれば未だ化粧と云う女の嗜みを覚え始めようかと云う若年にして、巫女姫の行動力は、歴代に続く姫君とは異質なまでに線を画す輝きを放っていた。
五年前を思い出す。
『御無沙汰しております、キール様。この度は病床の父の名代として学館を訪問させて頂いております。
父も病床にありながらも、キール様の健やかなる御学業の邁進を常に願っておりまして… ――』
『始めまして、君がクロード、彼のジェフロイ氏の御子息か。
四年先を歩むに過ぎない者の言葉でしかないが、此処ベルサリスで学んだ事をやがて王国の為に役立てる日が来る事を、ああ、私からも是非ともキール様の事をよろしくと… ――』
男は彼の学館の学徒では無いが、自由の校風と幅広い教養を齎す彼の学校の名声は常に聞き及んでいた。
五年前、当時存命でいた父の名代としてシュビトに訪れた過去を思い出す。
されど五年。しかしたかが五年の短期間にも、世情は刻一刻と変化に波打つのだ]