― 回想/八年前 ―
[師に保護された当初は、母を失い父に捨てられたショックでほとんど抜け殻のようになってしまって。
拒絶される事を恐れ会話どころか声すら発せなくなっていた自分を、師は実に根気強く見守り支えてくれたものだと思う。
御陰で、二年の月日が過ぎた頃には多少の会話位出来る程度に声は戻って。
けれどまだ独りになるのは怖くて師から離れられなかったから、知らぬ人から見れば酷い人見知りだと思われていただろう。
その客を迎えたのは、そんな状態の時に、だった]
れなーとぅす…レトくんで、いいの?
わたしね、…リーゼロッテって、いうの。
[師の友人だという人と一緒に来た男の子に、未だ名乗り慣れない名を伝えて。
子供は子供同士遊んでこいと、背中を押され出ていた庭でそれは起こった]