― 城へ至る獣道 ―
[下生えの揺れるざわめきの後、突如一行の前方に、ゆらりと人影が現れた。
その人物は、暗色のフードを外しながら、先頭のソマリへと声を掛けた。]
私だ。
[短い銀髪が、薄暗い森に差し込む陽の光を受けて、淡く輝く。
現れた、常に睨み据えているような冷たく厳しい顔つきは、同じくクルースニクである修道騎士のものだった。
彼は足の遅い聖女たちに配慮して、先行して偵察に出ていた。]
この先も特に罠らしきものも待ち伏せの気配もない。
相手が奇襲を警戒していないのは間違いないようだ。
[素っ気無く伝え、ソマリの傍らに並ぶ。]