― 旅の空の一幕 ―
……ふぇ?
[不意に投げかけられた問い。
それに、少年が上げたのはどこか惚けた声だった]
「だから、な。
お前は、何のために強くなりたいんだ?」
[きょとん、と瞬く少年に、師は改めて問いかける。
修行の旅に出て二年が過ぎた頃。
半身たる褐色の影竜を得て、騎竜師としての在り方や心構えについても学び始めた少年は、同時、がむしゃらに力を求める言葉を繰り返すようにもなっていた。
強くなりたい、と繰り返す、そんな弟子の様子を案じた師匠の投げかけた問い。
少年は傍らでこちらを見上げる紫紺の瞳を見やり、それから、改めて師に向き直った]