もうすぐお姉さんと別々になるんだから、しっかりしなきゃ。と続けると、「わかってるよー」と返して、はぐれた雲はまた空に戻っていく。じゃあね!と手を振りながら。
少年が去った後の表通りをゆっくり歩くと、馴染みのお茶屋さんが見えてくる。
看板娘は柔らかな声でお茶とお菓子を道行く人に勧め、優しい笑顔を浮かべた店主が、いつものように店の前とその周辺の掃き掃除をしていた。
「こんにちは」
「こんにちは、アリーセちゃん」
「いいお天気ですね。ええと、今日のお薦めのお菓子はあります?」
「今日は、柏餅、草餅のがおススメですよ!」
「じゃあ、それを自宅用に。ふたつ下さい」
「はーい!」
はきはきと答え、店主の代わりに奥へと菓子の注文を通す少女を、向かいの惣菜店の店員の青年が眩しそうに見ているのをちらりと見遣って、小さく微笑んだ。
彼ら二人の仲を、自分が作った花束が少しでも後押しする事ができたのなら何よりだと思いながら。