― 嵐の海 ―
[視界が一瞬ひっくり返ったような感覚の後、
自分が、砂浜に立っていることを知る。
目の前には荒れて逆巻く鈍色の海。
そして、叩き付けるような雨と風。]
なっ、…くっそ、いきなり天気まで変わりやがって。
[さえぎるものなどない砂浜の上。
とりあえずはマントを傘替わりにかざして、周囲を見渡す。
人の姿はなかったが、荒れる波の向こうに帆船が見えた。
遥かな洋上で激しく動き回るいくつかの帆船。
かすかに届く響きは、雷のものではないだろう。
見慣れない形の船たちを、目を細めてしばし眺めた。]